長周期地震動の予測情報に関する実証実験

長周期地震動モニタについて

緊急地震速報をもとに推定した長周期地震動の予測結果と、防災科研が運用する全国各地の強震計で観測される今の長周期地震動の様子を、一枚の地図上で合わせて御覧いただけます。観測された揺れの大きさに応じて色を付けた点を地図上に表示し1秒毎に更新することで、揺れの伝わっている様子を動画として閲覧できます。また緊急地震速報の受信時には、揺れの予測値の大きさに応じて地図を色づけして表示します。従来の強震モニタによる震度等に関する情報では把握できない長周期地震動に関する予測・観測情報をリアルタイムで表示します。

2017年度(第1期)のアンケート調査結果を参考に改良した「長周期地震動モニタ2018」では、新たに以下の機能を追加しました。

(1) それぞれのユーザーが予め指定した地点に対する長周期地震動の予測情報を御覧いただけます(2地点まで指定できます)。

(2) 「長周期地震動モニタ」と「強震モニタ」を同時にもしくは切り替えて御覧いただけます。

さらに「長周期地震動モニタ2019」では、各参加者が予め指定した時刻に大地震時の長周期地震動の予測・観測情報を提供する「訓練モード」を追加します。これによりいつでも大地震時の揺れを長周期地震動モニタ上で再現でき、あたかも今地震が発生しているものとして取るべき対応の確認や検証を実時間で繰り返し確認できるようになりました。提供するデータは、平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震、平成28年(2016年)熊本地震、平成30年大阪府北部の地震、平成30年北海道胆振東部地震です。また、2020年1月より、アンケート調査でご要望の多かった「緊急地震速報発表時のポップアップ通知機能」の追加を予定しております。

長周期地震動モニタ2019の表示例

通常時(長周期地震動モニタ)

通常時(長周期地震動モニタ)の表示例

通常時(強震モニタ)

通常時(強震モニタ)の表示例

共通設定画面

共通設定画面の表示例

緊急地震速報(予報)受信時

緊急地震速報(予報)受信時の表示例

緊急地震速報(警報)受信時

緊急地震速報(警報)受信時の表示例

過去の大地震時の様子をご覧いただけます。(AVIファイル。再生ソフトが起動します)

強震モニタの表示内容についてはこちらをご覧ください。

訓練モードの表示例

訓練モード設定時(訓練用地震として平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震(2011年3月11日)を設定した場合)

訓練モード設定時の表示例

長周期地震動の指標について

●長周期地震動階級

周期1.6~7.8秒の全ての絶対速度応答スペクトル(Sva)の最大値から、下表にもとづき計算します。

●周期ごとの階級データ

周期1秒台、2秒台、...、7秒台の絶対速度応答スペクトル(Sva)の最大値から、下表にもとづき計算します。

●絶対速度応答スペクトル(Sva)

高層ビルにおける高層階の揺れの大きさを表現するために、高層ビルを振り子でモデル化し高層階の揺れに相当する振り子の揺れ(絶対速度応答波形)を地表の揺れから計算します。振り子の揺れの最大値を周期に対してプロットしたものを絶対速度応答スペクトル(Sva)と言います。長周期地震動階級の計算の際には、周期1.6~7.8秒(0.2秒刻み)・減衰定数5%の振り子モデルから計算した絶対速度応答スペクトル(Sva)を用います。

※長周期地震動階級等の指標の詳細は「長周期地震動階級および長周期地震動階級関連解説表について」(気象庁ホームページ)もご覧ください。

長周期地震動階級 絶対速度応答スペクトルSva(減衰定数5%)の値
(対象周期T 1.5秒 > T > 8.0秒)
階級1 5cm/s ≦ Sva < 15cm/s
階級2 15cm/s ≦ Sva < 50cm/s
階級3 50cm/s ≦ Sva < 100cm/s
階級4 100cm/s ≦ Sva

長周期地震動の予測値・観測値は、長周期地震動階級の計算に用いる絶対速度応答スペクトル(Sva)の値にもとづき色をつけています。

長周期地震動の予測分布について

長周期地震動モニタでは、緊急地震速報を用いた長周期地震動階級等の予測を約5㎞四方のメッシュ単位で行い、地図上ではメッシュを色付けして表示しています。緊急地震速報による地震の位置・規模をもとに、地震の規模・震源から予測点までの距離・予測点の地盤情報を考慮し予測値*を計算します(Dhakal et al. (2015)の手法による)。地盤情報については防災科研の地震ハザードステーション(J-SHIS)で公開されている深部地盤構造モデルのS波速度構造1.4km/s上面深さを用います。

*絶対速度応答スペクトル(Sva)を予測し、その値から長周期地震動階級等の予測値を計算します。また、予測結果には誤差が含まれます。

参考文献

Dhakal, Y. P., W. Suzuki, T. Kunugi, and S. Aoi (2015), Ground Motion Prediction Equations for Absolute Velocity Response Spectra (1-10 s) in Japan for Earthquake Early Warning, 日本地震工学会論文集, 15, 91-111, https://doi.org/10.5610/jaee.15.6_91

Dhakal, Y. P., W. Suzuki, T. Kunugi, and S. Aoi (2018), Performance Evaluation of Ground Motion Prediction Equations for Absolute Velocity Response Spectra (1-10 s) in Japan for an Earthquake Early Warning, 日本地震工学会論文集, 18, 203-216, https://doi.org/10.5610/jaee.18.2_203

長周期地震動の観測値について

防災科研が運用する全国の強震観測点で得られた揺れの記録から逐次的に絶対速度応答スペクトル(Sva)を計算し、その値から長周期地震動階級等の観測値を計算します。観測値は各観測点の位置にある点の色で表現します。気象庁ホームページで発表している長周期地震動に関する観測情報の内容とは、使用するデータや計算方法が異なるため必ずしも一致しません。

緊急地震速報について

緊急地震速報の表示の条件は、2箇所以上の地震計で観測された地震波を解析した結果、震源・マグニチュード・ 各地の予測震度が求まり、震源が150kmよりも浅く推定された場合で、マグニチュードが3.5以上、または最大予測震度が3以上である場合としています。また、地震波が2点以上の地震観測点で観測され、最大震度が5弱以上と予測された場合に、 警報として発報されます。

詳しくは、気象庁の「緊急地震速報について」のページをご覧下さい。

日本地図県境線について

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